金子 浩行
大学の4年間はとても貴重な時間です。私にとっては、人として大きく成長できた4年間でした。大学で過ごした日々を今振り返り、これから大学生活を始める皆さん、そして大学生活を満喫されている皆さんに、少しでも参考にしていただけたらと思いペンを執りました。
私の学生生活は「出会い」の一言に尽きます。あの時、あの出会いがなければ今の自分は存在しないと思えるくらい、幸運な出会いと縁に恵まれたとあらためて実感しています。そして最大の出会いは、大学3年目の夏に訪れました。
私が選んだ小林泉教授のゼミでは、毎年何らかのかたちでフィールドワークを行っており、その年はミクロネシア連邦でのフィールドワークが計画されていました。
「海外調査の実体験を通して、フィールドワークの手法を学びながら、調査地域の政治、社会状況を把握する」という目的のもと集まった学生たち。私もそのうちの一人でした。この研修は、ゼミの3・4回生が合同で行うもので、私は3回生での参加でした。にもかかわらず、私がリーダーに選ばれたのです!
先輩たち(浪人していたので年齢は同じでしたが…)は怖そうだしどうしよう?初めての顔合わせでの緊張たるや今も忘れません!その場から逃げ出してしまおうかと思ったほどです。果たしてこのメンバーとうまくコミュニケーションをとり、まとめることはできるのだろうか?不安はどんどん膨らむばかりでした。
しかし、リーダーになった以上、自分なりに精一杯やろうと思いました。はじめのうちは、メンバーと相当ぎこちないやりとりがあったと思いますが、必死すぎてよく覚えていません。ただ、そのぎこちなさを一気に解消したのが、ミクロネシア訪問前に日本で行った壮行会(と言っても実際はただの飲み会)だったことを、今でもはっきりと覚えています。
お酒の勢いにまかせて、今まであまり人に見せることのなかった、ありのままの自分を出してみたのです。自分が抱いている悩みを打ち明けたとき、みんな顔色一つ変えず話を聴いてくれました。
そこにはその場かぎりの軽い答えやありきたりの慰めはなく、みんな同じように悩みを抱えながらも、それぞれが自分を素直に見つめ、一生懸命前に進もうとする姿がありました。そんな空気のなかから生まれたのは、仲間への興味であり、信頼であり、尊敬であり、感謝でした。人と深く関わることの喜びを実感し、こいつらとは親友になれるぞと確信しました。そして、今でもこの研修に参加した仲間との友情は続いています。
大学で出会う友人は、それまでとは少し違うと思います。ちょっと大人のようで、完全な大人でもない時期。それぞれ将来を考える時でもあります。それは、みんな同じように大学に進学する高校とは違います。みなと同じという安心感をもとめてすごしていたら取り残されてしまいます。
親友とは馴れ合いではないと思うのです。ともに学ぶ仲間ではあるけれど、いずれそれぞれの将来に向かって違う道を歩まなければなりません。だからこそ、ひとつのテーマをもとにぶつけ合い、切磋琢磨しながら、どんなかたちになろうとも、ひとつのものをみなで作り上げる喜びを実感することが必要なのだと思います。これは大学でなければ経験できないことだと思います。そして、この経験は今でも粘り強くやりぬく力として、私を支えてくれます。
もうひとつ、私が大学で学んだことは必要な情報を調べる方法と、その情報をどう分析し答えを導き出すのかという、ものの見方です。言い方は乱暴かもしれませんが、大学で得るべきものはたくさんの情報や知識ではなく、方法論とものの見方だと私は思います。
もちろん常識的な教養や知識は必要です。しかし、将来その分野の専門家になるなら別ですが、多くの人は普通の会社に就職し働くことでしょう。そのとき、必要とされるのは専門的な知識よりどう仕事を進めるのかという方法と、情報をどう分析するかという見方なのです。ある仕事に必要なデータや情報をどのように調べ集め、どう分析し仕事で求められている結果に結びつけるのか?情報を集め分析し答えを求める力。この力があるかによって、仕事の成果がまったく違ってきます。ぜひ、大学では知識を得るばかりでなく、先生や友人たちから方法論やものの見方を学んでみてください。
これから大学生活を始める皆さん、そして学生生活を満喫されている皆さん。どんな小さなことでも、とことん突き詰めてやり通したら、それは本物の力となります。人が何と言おうとも、自分が楽しいと思えることをとことんやってみてください。それが将来どこで役立つかわかりません。ちなみに私の場合は、クラッシック音楽が好きで、今はCDの小売業者で働いています。好きでやっていたことが意外とばかになりません。ぜひ、貪欲な興味を失うことなく挑戦してください!
(会社員 2002年3月卒業)
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