神田靖子、三輪信哉
11月1日(水)5限目に、11号館11-02-03教室にて、国際セミナー「ネパールへのかけはし : 東洋医学を日本で学び祖国に伝える」と題して学生対象の講演会を行いました。
講師はネパール人スシル・サキャさん (Sushil Shakya)で、パワーポイントを使いながら、多民族・多言語国家の状況、都会や農村の生活、宗教や文化、ヒマラヤの現状などの紹介とともに、西洋医学を志して来日されたご本人が東洋医学に転じて日本の「鍼灸師国家試験」に合格し、国家資格を取得された経緯や苦学の様子などを聞かせていただきました。
ネパールはヒマラヤのふもとにあり、近年の政治的混乱もあって農村部から都市部に多く人々が移り住み人口増加が続いています。首都カトマンズはたくさんの寺院があり伝統的な街並みを残してはいるものの、人口増加による交通渋滞や河川の汚染、停電の連続など、都市の環境が年々悪化しているとのことです。その上、重要な観光資源であるヒマラヤでさえ地球温暖化のために氷河が年々目に見えて減少しているなど、環境問題が非常に深刻な状況になってきていることをネパールの人々はとても憂えていると訴えられました。
またかつてネパールでは病院が皆無で、手術を受けようとするとインドまで行かなければならない状態だったこと、近年、病院も増え、高度医療も受けられるようになってきているが、それでも高額で、東洋医学、特に鍼灸の普及が待たれていることなどを話されました。
そして、日本で鍼灸師の国家資格を取るときに、漢字を学ぶことがどれほど困難で、何度逃げて帰りたいと思ったか、それでも多くの支援者にこたえねばと「死んだと思えば何でもできる」という言葉を胸に、必死の努力をして越えてこられたこと、そして今の日本がどれほどすばらしいか、また日本の大学生がどれほどそのありがたさに気付かずに生きているか、流暢な日本語で切々と語られ、一度は途上国に足を運んで自らの目で見てくることを学生たちに勧められました。
奥様と小学校4年生のお嬢さんも来校されましたが、お嬢さんは国語であるネパール語のほかに、公用語としての英語、さらに外国語としての日本語、ヒンズー語、そして自身の民族語の5つの言語を話すことができ、将来は日本の大学に留学して医師になりたいと希望されています。50名ほどの学生が参加しましたが、皆真剣に聞き入っていました。
またこのような国際学部ならではの機会を設けていきたいと思います。
(国際学部教授)
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