7月26日に開催された研修会「ちきゅうじん・多文化理解を深めるために II」午後の部では、小中学校の教員と大阪学院大学教員・学生が参加したワークショップが行われました。
ワークショップのテーマは、1)外国にルーツをもつ子どもの課題を明らかにすること、2)「違いを豊かさに変える」ことをどのように子どもたちに学ばせるかということでした。
まず多文化理解教育に携わっている3人の先生方からのプレゼンテーションが行われました。小谷恭子先生(日本語適応教室さくら広場講師)からは、「新たな渡日の子どもの課題」が提示されました。例えば、生活言語と学習言語の違いが無視されがちであること。すなわち渡日生徒が日常会話に上手になれば、学習言語の不十分さが忘れられがちになること。また文化に起因する問題とパーソナリティに起因する問題の見極めに注意しなければならないなどです。
第二に橋本雅江先生(門真市立沖小学校)から「一人の渡日生として感じた日本の学校、そして教師となった今感じる日本の学校」の報告が行われました。橋本先生ご自身が、5歳のとき中国の天津から日本に来た渡日生であり、日本の文化になじむのに大変苦労された体験を語りました。そのなかで幼稚園の先生がかけてくれた「イッチワン(一起玩児:一緒に遊ぼう)」という言葉に励まされ、子どもの気持ちが分かる教師になろうと努力されたことがパワフルに語られました。
第三にピョン・イルボン先生(大阪市立住吉小学校)から「希望をもって、いきいきと暮らすこと」が報告されました。先生は朝鮮籍を持ち、家庭では朝鮮の文化を維持しながらも、高校時代までは日本名を名乗っていました。しかし高校時代にアメリカ留学をしたことをきっかけに、自分のルーツを見つめ直し、本名を使うことになった経緯が語られ、またご自身が携わった民族学級での指導の体験が報告されました。
その後4つのグループに分かれて、討議が行われました。討議では現場で起きている問題が深められました。渡日生の生活のつらさを理解することが大切である。渡日生指導のためには、その子の親とつながることが重要である。渡日生を受け持つ担任の意識が重要である。日本の文化と外国の文化をそれぞれ理解させることが大切であるなど活発な討論が行われました。
準備に携わった我々としては、多文化理解教育の現場を知るという意味で大変学ぶことの多い研修会でした。またこのような問題に関心を持っている先生方の交流の場を形成することができたことに、大変意義があると感じました(広野)。
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