10月13日、国際学部OB小谷博光さんを迎えて交流会が行われました。神田靖子先生がご自身の講義をオープンにされ、国際協力に関心ある学生を集めて小谷さんの経験報告がおこなわれたのです。
小谷さんは、海外青年協力隊として単身 南米パラグアイに派遣され、農業指導員としての仕事を終えて帰国されたばかりです。派遣された先はサン・ホアキンという人口1500人程度の山間の村です。そこの唯一の小中高一貫校で、おもに野菜の有機栽培の手法を伝えたそうです。
有機農業を伝えたのは、肥料を買えない貧しい農家でも、おいしい野菜が作れるからです。学校では実習で作った野菜を収穫して、村の中心に販売に行くことも試みました。販売をして利益をあげ、来年の作付けをどのようにするのか考えて欲しいという願いからです。また野菜の栽培を伝えたのは、現地ではあまり野菜を食べないので、食生活の幅を広げるという意味もあるそうです。
ワークショップでは、小谷さんが現地の学生たちを指導しているビデオも流されました(『グッと!地球便』(YTV)で放映されたものです)。現地の言葉を使い、小谷さんは学生たちとうまくコミュニケーションがとれているようでした。しかしその小谷さんでも、はじめのうちは、事前に修得したスペイン語が使われていない現実に困惑したそうです。しかし現地の人と、テレレというお茶をまわし飲みしながら、コミュニケーションをしているうちに、半年くらいで現地の言葉(グラニー語)をマスターしたそうです。彼の現地適応能力は驚くばかりです。
少人数の報告会でしたので、進行役の神田先生が学生さんからの意見を引き出しました。みんなはシンプルな表現で驚きと共感を示しました。意外だったのは「最大のカルチャーショックは何ですか」と尋ねられたとき、謹厳実直な小谷さんが「現地の人が女の人をとても好きなことです」と答えたことです。ワークショップの場がそのときから和みました。
さらに「日本人は現地では尊敬されている。日本人移民が農業移民としてしっかりとした実績を作り上げたからである。また現地にはどこの家にもあるテレビ、DVD、バイクの高級ブランドが日本製であるから」とも説明をして、皆の関心をひきました。「食生活には必ずしも慣れなかった。パスタが出たときは嬉しかったのですが、シンプルな味付けの小麦を練り焼いたものは最後まで閉口しました」という言葉には、2年間の苦しさがしのばれました。
またあらためて有機農業の意義をたずねられ、「大人はすでに価値観や習慣が根付いていて新しい方法を受け入れてもらうのに苦労した。だからこそ、子どもたちに、お金のかかる化学肥料を使った農法だけでなく、有機農業を伝えたかった」と小谷さんは述べました。
さらにつづけて「またそのような教育が継続されるように、自分が前に立つのではなく、現地の先生と協力して取り組みました」と述べていたのは大変印象的でした。まさに小谷さんは、慎ましやかな古きよき日本人のモデルを思い出させてくれました(広野)。
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