7月28日、吹田市立教育センターとの連携講座「ちきゅうじん 多文化理解を深めるためにIV」が学院大で開催されました。今回で4回目を迎えるこの講座は、小中学校の教職員および学院大教職員ならびに学生が、同じテーブルについて講義やディスカッションを通じて、多文化理解を深めることを目的としています。
今年は学院大学の松本芳明先生を講師として「スポーツを通して見る多文化理解-スポーツって何?」というテーマが設定されました。
「スポーツって何?」という一見分かり切った問いかけから、この研修は始まりました。続いて「チェスはスポーツですか?」という突拍子もない質問がおこなわれました。チェスがスポーツであるわけはないでしょう。ところが意外なことに、チェスが2006年度のアジア大会で正式種目に採用されたと説明がおこなわれました。
松本先生によれば、スポーツとは語源的にはラテン語のdeportareに由来し、日常の労働から一旦少し離れること、そこから気晴らし、休養などを意味するとのことです。それならば、チェスがスポーツに分類されてもおかしくないということになります。
屋外での全身運動をスポーツと考える近代スポーツ論が、イギリス発祥であることが説明されてから、議論はそれを飛び越えて民族スポーツに向かいました。民族スポーツとは、各民族の文化や社会の生業に深く結びついたスポーツです。
具体例としてコートジボアールでおこなわれているレスリングの一種である「ゴン」が紹介されました。そこではわれわれが迷信と退ける、精霊の力を借りることが普通になされていました。精霊の力がこもっている腕輪が相手に断ち切られたとき、無敵を誇っていたレスラーの力が見る見る失われている映像が提示されました。そのような映像を見せられたわれわれは唖然とせざるを得ませんでした。松本先生は、この関連で違う文化を持つ人とどのように付き合うのかという問題に関して、違いを優劣の観点から見るべきではないということを強調しました。
最後に参加者から、本日の研修がどのような実践に結びつくのかという質問がおこなわれました。松本先生は、多文化理解はストレートには日々の教育実践には結びつかないがと留保をしたうえで、子供を教えるときにできる/できないの視線になりがちなことを防ぐということをあげました。松本先生は、教職志望の学生で逆上がりができない人たちに教えた経験をあげ、彼らが、先生のコーチで逆上がりができるようになったとき、目からうろこがとれたようになったことを指摘しました。逆上がりは、できるようになる方法論が確立しているのであり、できる/できないは絶対的なものではないということを理解したということです。
3時間近い長丁場の講座でしたが、松本先生の講演の面白さならびに参加者の熱気のために本当にあっという間に終わってしまいました。無理やり連れてこられて、その上セッションのまとめの報告までさせられた学生さんにも感謝します(広野)。
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