大津 雄太
タイを訪れる前から、一度「タイ式マッサージ」というのを試してみたいと思っていた。そして念願かなって、タイ式マッサージ発祥の場所で体験できることとなった。
発祥の場所というのがバンコクのワット・ポール寺院である。このお寺は、チャオプラヤー川沿い、旧王宮のすぐ南にある。由緒あり、格式が高いお寺である。一般には、本堂に安置されている長さ49メートルの黄金の涅槃像でよく知られている。
「お寺でマッサージ」と思われるかもしれないが、元々は医療として僧侶が行っていたものである。ワート・ポーはタイの学問の総本山とも言われている。その学問のなかの医学にマッサージや按摩などもあり、インドのヴェーダ医学や漢方医学などの東洋医学の影響も受けている。
今は、寺院内にあるマッサージ学校で学んだ人が、市内の店で働くまで、実習としてマッサージを行っている。料金は安めである。コースとしては全身マッサージ30分・足つぼマッサージ45分である。今回は、歩き疲れていたので足つぼマッサージのコースにした。
ずいぶん迷いに迷って、やっとマッサージの場所に着いた時には、見つかったことにホッとした。外観はいたって普通の建物で、タイ式マッサージの発祥地なら風格のようなものがあるのかと期待していたが、あっさりと裏切られた。それに、建物の前では作業服の女性が客引きのように立っていて、何となく入りづらい感じだった。
中に入ってみると、お客さんでいっぱいだったが、タイミング良く待たずにいけた。全身マッサージ用の板張りベッドが十数台、足つぼ用のイスが5脚ほどあるだけの質素な空間だった。
足つぼマッサージを受けるにも、用意されたズボンに履き替えなくてはならなかった。そしてイスに座ると、マッサージをしてくれる係の人が来て、挨拶をしただけですぐに始まったのである。別に痛くはないし、それにタイ語がわかるわけでもないので、説明してもらっても仕方がないと思っていたが、いきなり始まるのには驚いた。途中で身体に良さそうな薬草のジュースのような飲み物を渡してくれる。これは見た目よりも美味しかった。
黙々とマッサージは続く。たまに目を合わせても、お決まりの笑顔で返してくるだけである。マッサージをしているのは実習生ばかりのようで、マッサージをしながらも隣の実習生と関係のない事をしゃべっているのがわかるほどである。それを観察しているのは、とても面白い体験になった。
そんなことに気を取られながらも、30分のマッサージはあっという間に終わった。当初、もっと痛いものを想像していたが、思っていたタイ式マッサージとは違い、少々ガッカリした。ところが、終わってから立って歩いてみると、このマッサージのすごさに驚いた。歩き疲れていた足がほんとうに軽くなったのである。自分でも信じられなくて、何度も足を上げてみたほどであった。
(国際学部学生 2004年入学)
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