安形 麻紀
14年前、緑の木々に囲まれた大学のシンボル時計台の前で、期待に胸を膨らませ進学したときのことは、今でもはっきり覚えています。生まれ育った岐阜を離れ、大阪での大学生活は私にとっての新しい人生のスタートそのものでした。
私が国際学部を選んだ理由は、中学校時代から英語がとても好きで、次第に外国の政治・文化・風習そして歴史的なことに興味を持ち始めたからでした。授業を受ける中で、アメリカに強く関心を持ちました。実際に現地の生活にふれてみたく、こつこつ留学に必要な費用を貯め、大学3年の夏、夏期休暇を利用して2ヶ月程の短期留学を実現することができました。
留学先として選んだのは、ロッキー山脈西側に位置し、日本の本州ほどの広大な面積を有するユタ州にある、州都ソルトレイクシティから近いシーダーシティという町でした。州の人口のほぼすべてがモルモン教です。そのせいか夜も施錠せず就寝に入る程治安が良く、また人々も穏やかで、とても親日的な土地柄で住みやすい所でした。
留学先ではもちろん語学を通しての文化・風習なども学んだのですが、滞在中にそれまでの私自身の価値観を大きく変える出来事がありました。ホームステイ先である夕食時のホストマザーの「ネイティブ・アメリカン」についての話でした。私はその当時それが何を意味しているのかも知りませんでした。
「ネイティブ・アメリカン」は、ヨーロッパ白人が移住する以前の先史時代から、北アメリカに住んでいた先住民のことです。彼らは独自の言語や文化を築き上げ、豊かで進んだ文明を育てていたのです。しかし白人による虐殺によって100万人の95%が死に絶え、その中には子供も多く存在したということでした。
ただ表面的な楽しい海外生活ばかりを見ていた私でしたが、こんな歴史的背景があり今現在に至っていることを知り、初めて国際・人種差別問題について考え、ユダヤ人迫害、在日韓国人について書かれている書物を何冊か読みました。過去に起きた出来事としてではなく、真摯にそのことを受けとめるべきではないかと思います。同じ地球上に生きている人間同士、偏見・差別はとても悲しいことだと思うのです。まして血を流す争い事は決してあってはならず、平和で安全な世の中がいかに大切かを感じました。そのためにも、真の国際人としてどうあるべきか考えていかなければなりません。この2ヶ月間のアメリカ滞在期間に体験したことは、私にとってはそれからの在学中での課題となり、卒論に役立てることが出来ました。
それからもう一つ、私が大学4年間で得たかけがえのないもの。それはゼミの先生、多くの友人とのすばらしい出会いでした。志を高く持った彼らとの話はいつまでも尽きることなく、また先生は私達の質問に対し、いつもきちんとわかりやすく答えて下さいました。そんな彼らとの食事会、スキー旅行などはいつまでも楽しかった思い出として残り、彼らの存在は今でも私の心の支えでもあります。
大学生はお金はないけど(!?)時間は十分にあります。これは学生の特権だと思います。しかしただボーとしているだけでは、時間もあっという間に過ぎてしまうので、関心・興味があることにどんどん挑戦してみて下さい。その中で自分自身が将来、目指すべき道がはっきり見えてくると思います。そしてやはり、良き先生、友人との出会いがあるとよいと思います。彼らと交友を深めることができれば、自分の生き方そのものが素晴らしいものに変わると思います。時間を大切に、そして人との繋がりを大切に生きて行きたいものです。
現在、二児の母となった私ですが、学生の頃の気持ちを忘れず、インテリアコーディネーターを目指し、資格取得のための勉強と育児に励む毎日です。大学時代に培われた精神力があるから継続できていると確信しています。人生を本当の意味で楽しもうと思うなら、どこまでもどん欲になりまたそのことが、納得の出来る結果を生み出せると日々感じています。
(主婦 1997年卒業)
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