上住谷 崇
中国は日本と同じ東アジアでありながら、その文化や習慣の違いはとても大きかった。例えば、衛生面やそれに対する国民の意識に日本人との大きな違いを感じた。町中で平気でゴミを投げ捨てたり、痰を吐いたり、汚水をまき散らかしたりと、少なくとも私の住んでいた範囲内ではこれが当たり前であった。
そして特に違和感を覚えたのがサービス業である。日本の「お客様は神様」という精神とは違って、飲食店でもスーパーでも愛想が悪いところが多く、こちらまで不愉快な気持ちになることもあった。その都度心の中で思うことは「日本ならもっと丁寧な接客が当たり前なのに」ということだった。
そしていざ日本に帰って来て、意識的にそういった目で、日本の接客や行動を見た。そしてそこに多くの問題を感じた。私の場合、日本を頭の中で美化しすぎていたようだ。日本で今まで目にしていたことに、帰国後には、違和感や問題性を感じるということは、自分の国を客観的に見れるようになったのだろう。
こうして二つの国を客観的に見ることができるようになって、「同じ人間同士」という見方ができるようになったと実感している。これらの考え方は、外国人と接する機会が少なくない今の時代において非常に有用であるし、日本人としてのあり方にも影響を与えるであろう。
私は、2004年2月、ちょうど3回生が終わる頃留学に出発した。3回生の後期ともなると皆就職活動の準備を始めたり、実際に内定をもらった友人もいたりした。しかし私は当時、自分を見て、このまま社会に出てしまうことに疑念を抱いていた。私はその不安を少しでも軽減するため、また更に自らを知るために留学という手段を選んだ。
帰国は2006年2月であった。就活のスタートもやや出遅れ、情報交換する友人も無く、年齢だけは周りより上という状況の中、非常に不安ではあったが、幸いにも幾つかの会社から内定をいただくことができた。
留学が就職活動に与えた影響はどのようなものだったのか考えてみると、留学中に習得した知識や語学・技術が、直接仕事で生かせるとはとても思えない。知識よりも、むしろ学び取れる能力が評価されたのではないかと思う。
そして留学によって、どんなにすばらしい経験をしてもそれを相手にうまく伝えることができなければ、それが評価にはつながらない。そういった考えから、私は留学経験を就職活動で生かすために、以下のことを具体的に自らでまとめてみた。
「何を目的に行ったのか」「目的を達成するためにどのような努力をしたか」「結果はどうだったか」「そこから何を学んだか」「入社後にその経験をどう生かせるか」。
この5点を通して自分の良さをアピールしていくことが、最も簡潔で直接的に伝わると考えた。もともと就職に有利になるためにとか、資格を取って仕事で生かすといった目的で留学をしたわけではなかったが、自分というものを表現する際に、多くの経験や過程を通して得たものを使って相手に伝えるということができるようになったことは、自身が留学の過程の中で得たものがあったということなので、成功ともいえるだろう。この経験が今後自分の中で大きな助けになって行くことは間違いないであろう。
(IT関連会社勤務 2007年3月卒業)
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